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芳山二尊石仏

奈良市春日奥山芳山。花崗岩(奈良石)製。春日山より誓多林に抜ける道筋、峠から北に登った芳山の峰上にある。高さ184cm、幅152cm、奥行き1m余りの不整形方形状の石材を使う。石質は、奈良石とも呼ばれる軟質花崗岩で、亀裂が入り、決して石仏を彫るのに適した石材とはいえない。この辺りは、こうした石材の切り出し場であったという。 その南面と西面の二面に、蓮華座までを含む二重円光光背を彫りくぼめ、如来立像を厚肉彫りしたものである。南面の像高128cm、西面像130cmで、二体とも両手を胸前に上げて説法印を結ぶ。南面像の着衣は、両肩を隠して通肩にまとい、西面像は、右肩をあらわす偏袒右肩の衲衣であるところは双方に違いはあるが、印相が同じであるので、尊名は決めにくい。一応、南面像を釈迦、西面を阿弥陀に当てている。 肉髻の盛り上がりが小さく高く、力強くおおらかな表情と、薄い絹衣をまとったような浅い衣文、直線状に切った裳裾の裾には、足首を見せて立体的に彫られた足先がある。蓮弁は長く弧を描いて反りがあり、様式から見て奈良時代後期の作風を示している。西面像に比べて、南面像の顔は、細く小さく感じるが、ともに深い精神的内容の美が感じられ、特に南面像の表情には崇高感があふれていて魅力的である。形姿はほとんど同一ではあるが、着衣の形や襞の起伏・流れに変化を与えたところは、この作者の個性的表現のうまさがあり、優れた手腕の石工であったことを知らされる。奈良市頭塔石仏群を始めとし、こうした花崗岩をこなす石工は、いずれも帰化系工人であると私は考える。一石の二面に、如来像を彫成する表現に、溶けない疑問点が残るが、奈良時代後期に、奈良の東山中に修行する僧侶たちの崇拝仏として拝まれていた二尊石仏であろう。(奈良県史 第七巻 石造美術 1984年 p.287-p.288)

​アクセス

 

 

〒630-2171 奈良県奈良市誓多林町

JR奈良駅、近鉄奈良駅から市内循環バス「破石町」下車

滝坂の道沿いを歩き、誓多林公衆トイレを八柱神社側に左折

芳山頂上付近(途中に標識あり)。

破石町より、徒歩約1.5時間程度。

*登山道を歩くことになります。装備などの準備を心がけてください。

*行くには、急な斜面を登る必要があります。

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